どうしようもなく好きな人に
「今飲んでいるビールくらい君が愛おしいよ」と言われるのと
何となく好きな人に
「何よりも君が愛おしいよ」と言われるのでは
果たして、どちらが幸せなのだろうか
そんなことを、区民プールで泳ぎながら、ぼんやりと考える
平泳ぎ平泳ぎ平泳ぎ
クロールクロール
ビート板バタバタ
火曜の昼間からプールで泳ぐ暇人は少ないのか、いつもだったら目の前のおじさんのお尻を眺めながら泳ぐのに、今日は誰もいない
独り占めだ
となると、別のことが気になりだす
『あの監視員の人、私のことピンク野郎だと思ってないかしら』
『みんな大学生かな 水泳部かな』
『仮に、太ったおじさんが溺れたら、あの女の子飛び込んで助けられるのかな』
そんなところで、脳内でいつもの妄想がスタートする
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「はじめまして。あたらしく監視員のバイトをさせていただく木村です!」
『宜しくお願いします〜。あ、聞く必要ないだろうけど泳ぎは得意だよね?』
「!! も、もちろんです。高校の時は都大会とか出ました!」
『そっかそっかー それは心強いね』
数ヶ月後、どっかのおじさんが溺れる事件発生
『木村ちゃん、何やってんの!早く助けて!!』
「あわわわわ す、すみません、実は私泳げなくて…><」
『はぁ〜〜??』
ベテランのお兄さん監視員、無事おじさん救助。
「…嘘ついて本当にごめんなさい。ただ…どうしても、監視員のバイトがしたかったんです。プールが、ほんとに、好きなんです…。」
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うーん、大変だなぁそれも
なんてことを思ったりしながら90分ほど泳ぐ
しかし、平泳ぎって、カエルだよな
その後、びしょびしょの頭のまま、吸い込まれるように愛しの「カーナ・ピーナ」へ
CREAさんの取材でナン食べまくった以来だ
カランカランカラン…
「お久しぶりです〜〜 ハハ」
『あ!いらっしゃい〜。久しぶりだね、忙しかったの?』
談笑していつもの席につくと、おじちゃんとおばちゃんがコソコソ話し始める
うまく聞こえなかったけど、たぶんこんな感じだ
『(ナンまだあったっけ?)』
『(まだあるわよ、大丈夫)』
どうしよう
申し訳ない
なぜなら私は今日、ごはんの気分だ
「え、っと、今日はごはんにしようかな〜〜・・」
そもそもランチタイムのナンはカスタムメニューなのに、ごはんを頼むのにここまで緊張するとは
『?え?ナンもあるよ?』
「いや、なんか今日は白米かな〜なんて・・」
納得してくれたおじちゃんは、手際よくオーダーしたムングダールを作り始める
その5分後、斜め後ろの父子が頼んだナンを見てたら
「や、やっぱりナンにしとけばよかったかな・・」
と瞬時に舌の記憶が引き出されて、悶える
なんと意思の弱い人間だろうと、我ながら不憫に思う
しかし、白米とオニオンスライスとグリーンレーズンが、辛いカレーにまた合うんだ
美味しいんだ
お礼を言って、お腹いたいなーとか思いつつ、幸せな気持ちで自転車こいで家に帰るのでした
(※CREAさんの誌面で、辛さはホットがおすすめって三浦書いてますが、食べるととりあえずお腹いたくなるのでそこは自己責任で)